はじめに
「今日は子どもを塾まで送迎した」「会社の車でお客様を送迎する」――そんな言い回し、よく耳にしますよね。ところが実際には、「送るだけだったけど、“送迎”って言っていいのかな?」と迷ったことがある人も多いはずです。
日常会話やビジネスの場では、正しい言葉遣いが印象を左右します。

本記事では、「送迎」という言葉の本来の意味を確認しながら、「送るだけ」「迎えるだけ」のケースではどんな表現が自然なのかを丁寧に解説します。
結論:「送迎」は“送る+迎える”が基本。送るだけのときは別の表現を使うのが自然
結論から言うと、「送迎」は**“送る”と“迎える”の両方を指す言葉**です。そのため、「送るだけ」の場合に「送迎した」と言うのは、やや不自然になります。
ただし、会話の流れや文脈によっては、「送迎」という言葉を“移動を伴うサービス”として広義に使うケースもあります。とはいえ、正確な日本語としては「お送り」「お見送り」と言い換えるのが望ましいでしょう。
「送迎」の正しい意味と使われ方
国語辞典での定義
「送迎」は、次のように定義されています。
送迎(そうげい):人を送り、また迎えること。(出典:広辞苑 第七版)
つまり、「送る」だけでも「迎える」だけでもなく、両方を行うことを意味しています。たとえば、ホテルの「送迎バス」や「空港送迎サービス」は、基本的に“行きと帰り”の両方に対応していることが前提です。
さらに掘り下げると、「送迎」は古くから日本語に存在する複合語で、「送る」と「迎える」という二つの動作が対になっている点に特徴があります。もともと“人の行き来を支援する”という意味で使われており、単に車で運ぶ行為ではなく、「出発から帰着までを見守る」ニュアンスを含みます。このため、片道だけを行う場合に「送迎」と表現すると、“どちらも行った”と誤解されるおそれがあります。
また、ビジネスシーンでは「送迎バス」「無料送迎サービス」「送迎車」などのようにサービスの一部として用いられることが多く、利用者にとっては“行き帰り両方に対応してくれる”という安心感を与える言葉でもあります。例えば冠婚葬祭や介護の分野でも「送迎付きプラン」や「送迎介助」といった表現が使われ、そこでは安全性や心配りを含んだ総合的なサポートを意味します。
実際の使用例
- 正しい使い方:「ホテルの送迎バスがあります」(往復対応を意味)
- 不自然な使い方:「子どもを学校に送迎した(※迎えに行っていない)」
もし「送るだけ」の場合は、「送り届けた」「お送りした」と言う方が自然です。
「送るだけ」「迎えるだけ」の場合の自然な言い換え方
送るだけの場合
「送迎」という言葉の“送る”にあたる部分だけを指す場合は、以下のような表現が適切です。
- お送りする(例:お客様を駅までお送りします)
- 送り届ける(例:子どもを塾まで送り届けた)
- 見送る/お見送りする(例:駅までお見送りに行く)
これらはすべて「送り」の行為のみを指す表現であり、丁寧かつ自然に聞こえます。加えて、「お送り」はビジネスでもよく使われる言葉で、相手への敬意を込めた柔らかい印象を与えます。「送り届ける」は動作を具体的に示し、安全に目的地まで到達させたニュアンスを強調します。また、「見送る」は単に同行するのではなく、相手の出発を見届ける場面に適しています。たとえば駅のホームや玄関先などで使われることが多い表現です。
さらに、「お送りいたします」と「送ります」では、敬語レベルに違いがあります。前者はビジネスやフォーマルなシーンにふさわしく、後者は友人や家族との会話に向いています。このように、同じ「送る」でも文脈によって自然な言い回しが変化します。
迎えるだけの場合
逆に、「迎えに行く」だけの場合は次のような表現が自然です。
- お迎えに上がる(例:空港までお迎えに上がります)
- 出迎える(例:来客を出迎える)
- 迎えに行く(例:子どもを学校へ迎えに行く)
これらは「迎え」の動作を明確に示す表現で、相手を出迎える立場を強調します。「お迎えに上がる」は最も丁寧な表現で、ビジネスメールや電話応対などでも使えます。「出迎える」は少しカジュアルで、場面に応じた柔軟な使い方ができます。「迎えに行く」は日常的で親しみやすい響きがあり、家族間の会話などに適しています。
つまり、「送る」だけでも「迎える」だけでも、それぞれに専用の言い方が存在し、文脈や相手との関係性によって最適な言葉を選ぶことが重要なのです。
ビジネス・日常での「送迎」の使い分け例
ビジネスメールでの使い方
ビジネス文書や接客で「送迎」という言葉を使う場合は、相手の行動範囲を考慮することが大切です。送迎の対象がどこからどこまでなのか、また往復か片道かを明示することで、誤解や行き違いを防ぐことができます。たとえば社用車で顧客を空港まで送るだけの場合に「送迎します」と書いてしまうと、「帰りも迎えに来てくれるのか」と相手に誤解される可能性があります。こうした誤解を避けるためにも、ビジネスでは具体的な表現を心がけることが重要です。
- 正しい例:「会場までは弊社で送迎いたします」(往復を想定)
- 適切な言い換え:「会場までは弊社スタッフがお送りいたします」(片道のみの場合)
- 迎えのみの場合:「空港までお迎えに上がります」(出迎え限定)
また、メールや案内文では「送迎」を使うことで印象が変わる点にも注意が必要です。「送迎」はフォーマルな印象を与えますが、実際に送るだけの内容ではやや大げさに感じられる場合があります。一方、「お送りいたします」は丁寧ながらも控えめで、実際の動作を正確に伝えます。そのため、社内文書・案内メール・顧客対応など、場面ごとに使い分けることが信頼を得るコツです。
もし実際に「迎え」だけ行う場合には、「お迎えに上がります」と明示するのが丁寧です。加えて、相手がビジネスパートナーや顧客の場合は、出発・到着時刻をあらかじめ共有するなど、具体的な対応範囲を伝えると好印象を与えます。単に言葉遣いを正しくするだけでなく、サービスの意図を明確に伝える姿勢が、信頼関係を築く上で大切です。
日常会話での曖昧な表現
日常では、「送迎」という言葉が少し広い意味で使われることもあります。たとえば、
- 「今日も子どもの送迎大変だよ〜」
といった言い方では、“送る”か“迎える”のどちらか一方しかしていなくても、「送迎」と表現することがあります。これは口語的な略用であり、日常会話では問題ありませんが、正式な文書やビジネスの場では避ける方が無難です。さらに、会話では「送迎」という語が“送り迎えの手間全体”を指す便利な言葉として機能しており、厳密な意味よりも感情や状況を伝える役割が強いと言えます。
「送迎」と「送るだけ」を使い分けるときのポイント
- 正式な場では正確に使う:「送迎」は往復、「お送り」「お迎え」は片道を明確に。具体的には、会社案内や契約書、案内メールなどでは「送迎」と書くと“往復”が前提と受け取られるため、もし片道のみなら「お送り」「お迎え」と正確に記すことで誤解を防げます。こうした細かい言葉の違いは、企業の信頼性や丁寧さを印象づける要素にもなります。
- 日常会話では柔軟に使ってもOK:文脈が通じる場合、「送迎」と言っても違和感は少ない。家族や友人との会話では、「今日は子どもの送迎がある」といったように、送りだけ・迎えだけのどちらかをしていても自然に通じます。日常では意味の厳密さよりも、行動のイメージを伝える便利な言葉として機能しています。ただし、相手が誤解しそうな場合は「送るだけ」「迎えに行くだけ」と補足を入れるとより親切です。
- 相手に誤解を与えない表現を選ぶ:ビジネスでは特に「どこまで対応するのか」を明確にすることが信頼につながります。例えば「送迎サービスがあります」と案内する場合、往復か片道かを明示しないと、利用者の期待と実際のサービス内容がずれることがあります。顧客対応では「お送りのみの対応です」「お迎えは承っておりません」といった補足を添えると丁寧です。また、電話対応や案内サイトでも「送迎」を使うときは、対応エリアや時間帯を示すことで、安心感とプロ意識を伝えられます。
まとめ:「送迎」は便利だけど、文脈に合わせて正しく使おう
「送迎」という言葉は便利ですが、本来は“送る+迎える”の両方を意味します。したがって、送るだけの場合には「お送り」や「送り届ける」と言い換える方が自然で丁寧です。これにより、相手に対して誤解を与えず、状況を正確に伝えることができます。たとえば、子どもを学校まで送る場合には「送り届けた」、ビジネスシーンで顧客を会場まで案内する際には「お送りいたしました」と表現する方が、文脈に即して明確になります。
また、「送迎」という言葉には“出発と帰着の両方を管理する”という意味合いがあるため、単に送るだけの場面では少し大げさに響くこともあります。たとえば、「送迎を担当しました」と言うと、往復を含む責任や手配まで行った印象を与えるため、片道のみなら「送るだけ担当しました」といった補足が望ましいでしょう。
ただし、会話の中では「送迎」を広義に使うことも多く、厳密に使い分けるかどうかは文脈次第です。家庭内や地域の会話では、「送迎」という言葉が“送り迎えの手間全体”を象徴するような使われ方をすることが多く、「今日も送迎大変だった」というように、片方だけの行為でも気持ちを表現できます。このように柔軟な言葉の使われ方が日本語の魅力の一つとも言えるでしょう。
特にビジネスや公式な文書では、相手に誤解を与えない言葉選びを心がけましょう。たとえば、顧客案内や契約書では、「送迎サービスあり」と明記する場合、往復対応が含まれるかどうかを補足しておくことが信頼につながります。相手が「帰りも迎えに来てくれる」と誤解してしまうと、トラブルの原因になることもあります。
言葉の正しい使い方を意識することで、印象や信頼感がぐっと高まります。文章だけでなく、電話応対や口頭での説明でも、相手が理解しやすい言葉を選ぶことが大切です。ぜひ、日常の中でも「送迎」という言葉の意味を意識しながら、状況に合わせて自然に使い分けてみてくださいね。

